雪が降りそうだった。灰色の雲は厚いのに、不思議と暗くはない。目に優しい霞んだ色の景色が、自分の吐く息で濃度を増した。冬だ。 市営地下鉄の終点を降り、地上への長い階段の前。僅かに迷ってから、隣のエスカレーターを歩いて上がる。時間短縮という名…

亡き祖母が好きで集めていた着物の中に、酷く綺麗な十二単を見つけた。驚いたのは、その十二単が子供用の丈であったこと。そして俺宛の手紙が添えられていたこと。 手紙の中で祖母は持っていた着物を全て俺へ譲ることを述べ、自分亡き後の俺の幸せを願って…

コートに立てなくなってどれだけ経つのかを未だによく考える。思考の船は白く濁った記憶の海を渡り終える前にずぶずぶと沈んでいく。眠りに落ちる前はいつもこうだ。そしてこのまま、あの夢をみる。まるで意識だけ異世界に飛ぶような、現実味の無い夢を。 …

特別じゃない折原臨也の存在疑惑

臨也さんはまるで何も知らない子供の様にまた一人、人間の感情の底床をぶち抜いて微笑んでいる。凶悪でもなく、優越でもなく、クラスメイトの結婚式でも眺めているような目だ。底を抜かれた当人は、指一つ動かせない茫然自失の状態であり、今から暫くの間は…

デッサン再び

前回の美術で昏倒してから一週間。いま再び始まるデッサンの授業を考慮して昼飯は食べていない。吐いている余裕はないのだ。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。さっさと描いて終わらせなければ、長田さんを恨み始めてしまいかねない。悪いのは長田さんじゃないこと…

デッサン初回

昔からそういうモノはよく見るもんで、慣れてない訳ではないのだが、慣れることと平気だということはイコールではないのだ。小学三年のある日、担任の吉澤先生の背中に赤い服をびしょ濡れにした女性が負ぶさっているのを見た時は、1秒かからず気絶したものだ…

はるさんとはるさんの彼のはなし

世界は何であるか。その答えを出せなかった世の哲学者達に彼のソクラテスは言った。私達は“わからない”ということが“わかっている”、と。そして続ける。人間は賢いと。 それを国中の民に説いて回り続けたソクラテスはAC.399年、死刑となる。 たった今の講義…

大人になる

音も立てずに目の前から世界が消えた。黒塗りの視界に怯みながら耳をそば立てる。階段の下から母親が叫んでいる。洋介ぇ無事ぃ?と間延びした大声だ。 「大丈夫だよー」 「停電かしらぁ」 「隣も消えてるから多分地区停電だと思うよー」 困ったわぁと遠ざか…

リベラバビロン

切り立つ繁華街 低俗な美徳 簡素な未来像に原子力マーク 「病気だ、狂気だ」騒ぎ立てる雑踏 不都合纏め洗いざらい麻酔 権力者貪る 根刮ぎ奪ってく 街娼に名誉に硬貨に喰らい 毎夜毎夜 首くくり 落下 目もくれず利己 自尊自尊 群衆は耽美ジャンキー幻想に 心…

潜水艦トロイメライ

深度、段違いに潜りきった地図にない底に コーデュロイの海月、無色透明の寄生虫 気体バルーン纏った潜水艦、進め サーチライト照らせ照らせ 岩窟の深奥層 昼も夜も鉄の中の闇夜 パイプ管の振動 唯一の手記だけを頼りに沈もう 使い古された合図なんて必要な…

欲望は。

僕の欲望は、ごはんをもう一杯食べたいと思うこと。カロリーの取り過ぎだと分かっていても、夜遅くだと知っていても、白くてもちもちの米を、もう少し食べたいと思うこと。 眠り続けたいと思うことも僕の欲望。目覚ましのアラームを止めた時の選択で、1コマ…

映画

観たもの。 ・書道ガールズ ・るろうに剣心 ・探偵はBARにいる ・ツレがうつになりまして。 ・マルタのやさしい刺繍 ・鉄コン筋クリート ・グーグーだって猫である ・ジョゼと虎と魚たち ・メゾン・ド・ヒミコ ・西の魔女が死んだ ・誰もしらない ・かもめ食…

かわいいやつら

勝手に親愛なる羽流さん宅の子をお借りして。 狂ってる弥生さんと、それに付き合う鬼道さん。 温度差がお分かり頂けるだろうか。

第2回身内創作企画

自分の人差し指が<閉>のボタンを押す。あまりにも軽い感触に本当に押したのか不安になるが、ボタンが淡くオレンジに光るのを見て実感する。自分を乗せた箱が、ゆっくりと下へ動き始めた。 天井の電灯が作る自分の影を見ながらジーパンのポケットを探る。…

間違い探し

綴りまちごいた・・・。

下書き保存がいっぱいの2ヶ月

書いても書いても書けない2ヶ月を過ごして、書かねばならない時間になりました。 書けないことが辛くないのは、僕が文章を書く事にそれ程思い入れが無いからだろうか。 愛着が無いからだろうか。 好きだな、と思う瞬間は溢れるほどあるが。

つめたい女の子

「っひぁ!」 だぽんっ、と気泡にまみれてわたしは落ちた。 視界の透った水の中だ。薄いブルーに見える液体の世界に沈み込む。 飛び込んだ時の一瞬で生まれた幾千の気泡がわたしの肌にまとわりつく。 鼓膜に、空気のこすれ合う音。しゅわしゅわ。しゅわしゅ…

何のことは無い特殊な話

2010.12.19 20:39 『 日記代わりに 』 ブログ始めた。 comment:0 2010.12.25 16:14 『 爆発 』 しろ。 comment:0 2010.12.31 23:10 『 おぉ味噌か 』 ガキつかwwwwww山ちゃん今年もパーンwwwwwwカワイソスwwwwww comment:0 2011.01.01 12:07 『 あけおめ 』 初日の…

また会いましょうね。

夜は親切だった。 瞳孔が開ききった目が認識するのは黒と黒と、黒と黒。深夜2時52分の、街灯のない暗く沈んだ細い路地に浮かぶ濃度の違う黒。そして、一つだけ微かな残像を描いて揺れる、赤い小さな熱。 遠くで反響するように車の音がする。地べたに座って…

ねこたんモフモフするのが幸せです。

洵之介です。 戯言掃き溜めブログです。 今ふと思ったんですが、お茶によくある「ローズヒップ」ってバラのお尻って意味なんですかね( ・ω・)? なんか可愛いですね。